動物の成長などに必須なリノ-ル酸と脳神経機能を高く保つ上で必須なαーリノレン酸の比は、各種の慢性疾患の重症度に影響を及ぼす。αーリノレン酸/リノ-ル酸比を上げる方が良い疾患は、ガン(乳ガン、大腸ガン、肺ガン、腎臓ガン、すい臓ガン、前立腺ガン、食道ガン、皮膚ガンなど)、アレルギ-症、血栓性疾患(心筋梗塞、脳梗塞、老人性痴呆症)、高血圧、脳出血などであった。 抗一糸球体膜抗体による腎炎の症状は、高リノ-ル酸油食群の方が高αーリノレン酸油食群より弱かった。しかし、このような差は自己免疫疾患マウス(MRL)の腎炎症状ではみられなかった。 一方、エンドトキシンーガラクトサミン併用によるショック症状は高リノ-ル酸油食で抑えられたが、エンドトキシン単独投与の肝炎症状では差がみられなかった。腎炎、エンドトキシンショックの場合には食餌αーリノレン酸/リノ-ル酸比の影響は複雑であったが、明らかに、リノ-ル酸由来のアイコサノイドが防御的に働いている急性の病態があることが、明かとなった。 エンドトキシンの毒性は、主としてマクロファ-ジの腫瘍壊死因子(TNF)によるとされているが、高αーリノレン酸食群では高リノ-ル酸食油群に比べ、TNF産生量が10倍以上高かった。これが、エンドトキシンーガラクトサミン毒性の差をもたらした一因であると考えられる。同時にこの差が、高αーリノレン酸食の発ガン抑制作用の基礎となっていると考えられる。 各種慢性疾患の予防効果を示す高αーリノレン酸(シソ油)食は、リノ-ル酸含量が少ないため、生殖生理に悪い影響を与える可能性が想定された。しかし妊娠期間、出産期間、出産数、仔の成長率などに異常はみられず、シソ油の安全性が確認された。
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