研究概要 |
1.DNAポリメラ-ゼδ補助蛋白(PCNA)とホメオボックス蛋白に関する研究:我々がクロ-ニングしたラットPCNAのcDNAをプロ-ブにして高等植物のイネのPCNA遺伝子をクロ-ニングし、そのアミノ酸配列が動植物界でよく保存されていることを証明した。さらにショウジョウバエのPCNA遺伝子をクロ-ニングし、大腸菌で産生させたショウジョウバエのホメオボックス蛋白(eve,zen)と反応させ、DNaseーI footprint法で解析したところ、5'上流の三つの領域にこれらの蛋白が結合することが証明された。この成果をヒトに応用する目的でヒトのPCNAおよびホメオボックス4A遺伝子をクロ-ニングした。 2.先天奇形におけるDNA複製遺伝子およびホメオボックス(Hox)遺伝子の異常に関する研究:重症先天奇形15例のDNAにおいてPCNA、DNAポリメラ-ゼαおよびβ遺伝子の遺伝子異常を検索した。DNAを10種類以上の制限酵素で消化してそれぞれをサザンブロット解析を行なった結果、PCNA、DNAポリメラ-ゼβおよびα遺伝子の対立遺伝子の一方に異常のある先天奇形の1症例を見出した。健常人95例中の1例にDNAポリメラ-ゼβとγークリスタリン遺伝子に異常のある1例を見出した。次にDNAを10種類の制限酵素で消化して、Hox4AとHox4Bプロ-ブでサザンブロット解析を行なったが異常なバンドも多型性も全く検出されなかった。Hox4の近傍の多型性DNAマ-カ-(γークリスタリン遺伝子)をプロ-ブとして、先天奇形15例と健常人95例をPst I消化のDNAについて検索した。正常DNAでは2.1kbと1.7kbのヘテロ接合性のバンドの頻度は53%で、1.7kbのホモ接合性のバンドの頻度は27%であるのに対し、重症先天奇形ではそれぞれ7%と73%であった。この結果は重症先天奇形の遺伝子座がγークリスタリンの遺伝子と連鎖していることを示していると考えられる。
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