研究概要 |
選抜交配を通じて確立した2系;(1)Ehrlich腹水癌細胞(2×10^7)を背部皮下に移植すると著しい増殖を示し固形癌を形成する亜系(prg系と略)、(2)同じく癌細胞を移植しても増殖を示さず癌細胞は長期間dormancy(休眠)になるもの(drm系と略)を利用して次の研究を行った。 (1)drm系における癌休眠状態は最長、何日位持続するか。 drm系の背部皮下にEhrlich腹水癌細胞(2×10^7)を移植後,間隔をおいて休眠状態にあると思われるnodule(平均3mm×3mm)を摘出,それをprg系皮下に移植して再増殖の発現の有無を観察した結果,多くは3ケ月程度の休眠であったが,中に261日あるいは300日以上経過したものの再増殖発現の例も得られた。 2)prg系とdrm系の遺伝的分離について。 ddYマウス同一コロニ-からの選抜交配を続け,現在既にdrm系が15代目,prg系が9代目に入っているが,尾の皮膚移植試験の結果,drm系個体とprg系個体間の移植皮膚は10日以内に拒絶される。リンパ球混合培養試験(MLC test)でも同様な結論となった。 3)皮膚fibroblastの培養系の確立。 両亜系宿主のfibroblastのEhrlich癌細胞に対する反応性を比較するため,まず,fibroblastの初代培養系を確立した。幼若マウスの皮膚を使うのが良い方法と分った。 4)休眠を覚ます人工的手法。 休眠を起す宿主要因の解明が最終目標であるが,その手がかりを得る間接的手法として,休眠を覚まさせる人工的手段が欲しい。これまで,2,3薬物の投与を試みているが,いわゆるBRM(Biological response modifier)と総称される物質で休眠を覚ますものは見いだせていない。 さらに研究を続行する。
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