研究概要 |
1.ddYマウスを用い、選抜交配によってtumorーdormancy(癌休眠)の研究モデル動物を作出した。癌細胞はEhrlich腹水癌細胞(E細胞)を用いた。癌休眠系マウス(drmマウスと略)の皮下ではE細胞は約100日程度休眠状態にある。ただし、腹腔内では増殖する。 2.予めE細胞で免疫したdrmマウスの脾臓細胞を、癌増殖系マウス(prgマウスと略)に移入すると、drmマウスの癌休眠形質が伝達される。 3.リンパ球表面抗原から同定すると、drmマウス(F15)のHー2ハプロタイプはS,prgマウス(F10)のそれはqに分離していることが分かった。両系マウスのリンパ球混合培養試験では活性化が起こると、皮膚移植試験でも互いに拒絶が起こる。 4.他の近交系マウスにE細胞を同様に皮下移植しその増殖程度を調べると、Hー2ハプロタイプがk,q,vは増殖グル-プ、dとrは休眠グル-プ、pとsは拒絶/休眠、bは拒絶でることが判明した。ただし、E細胞を腹腔内に移植するかぎりどの系統マウスでも増殖する。 5.以上の結果を総合すると、この癌休眠モデルマウスでは細胞性免疫が関与し、皮下においてE細胞を長期間休眠状態に置くものと推測される。その際、Hー2ハプロタイプによる反応差が認められるがそれが主要な要因とは思われず、恐らくHー2以外の非主要組織適合性遺伝子の関与があり、皮膚・リンパ球に於けるE細胞に対する認識機構が重要ではないかと推測される。
|