1)HFRSウイルスにはアポデムス型、ラット型、クレスリオノミス型、ミクロトス型の4種類の血清型が存在している。これまでに明らかになっているアポデムス型、ラット型、クレスリオノミス型ウイルスのMゲノムセグメントの遺伝子配列と我々が明らかにしたラット型ウイルスのBー1株とを比較した結果、血清型に対して特異的な変異部位が存在することを明らかにした。この変異部位は感染性に関与している可能性が示唆された。 2)野外ラットから単離したKIー262株のMゲノムセグメントの遺伝子配列を決定した。KIー262株は実験室ラットから単離された株に比べ、病原性は弱く、変異部位はG2タンパク質上に非常に多く存在していた。病原性に関与しているのはG2タンパク質かもしれない。 3)Bー1株とHantaan株に感染したマウスの白血球を材料とし、PCRを用いたウイルスのゲノム診断法の確立をした結果、感染後1週間でウイルスゲノムは検出された。これは抗体検出よりも感染早期の診断が可能となった。また、ウイルス抗体は検出されても抗原がすでに検出されなくなった持続感染マウスからもウイルスゲノムは検出された。さらに、この診断において血球のサンプリングの方法により検出感度の変わることも明かとなった。すなわち、採血時のヘパリンの使用はリバ-ストランスクリプタ-ゼの活性を阻害することから、ヘパリンの代わりにEDTAを用いることにより、よい結果を得ることができた。 4)確立されたPCR診断法を用いて、実験用マウスのHFRSウイルス保有状況を検討した結果、サンプル数は少ないのではっきりしたことは言えないが、現時点においてBー1株やHantaan株の遺伝子を有した個体は検出されていない。
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