1)賢症候性出血熱ウイルスB‐1株のSセグメントのクロ-ニングと全塩基配列のMセグメントに用いたのと同様の方法で決定した。その結果、アミノ酸シ-クエンスのホモロジ-は同じ血清型のSR‐11株とは98.4%、Hantaan株とは83.2%、Hallnas株とは61.7%を示した。また、DNAの塩基配列のホモロジ-からHantaan株からB‐1株そしてフレ-ムシフトによりSR‐11株に進化したものと考えられる。さらに、血清型に対して特異的に変位する部位が1ないし2カ所存在した。Sセグメントの場合、アミノ酸シ-クエンスはHantaan株とは83.0%、Hallnas株とは73.5%のホモロジ-を示した。このことはHantavirusにおいてLセグメントが最も保存されていることを示している。さらに、RNA依存RNAポリメラ-ゼの活性中心と予測される部位の保存性は非常に高かった。また、Lセグメントにおいても血清型に対して特異的に変位する部位の存在が示された。 2)Hantaanウイルスからプラ-ク単離法により得られた2つのクロ-ン(HV cl‐1とHV cl‐2)は乳飲みマウスに対する病原性は全く異なり、HV cl‐1株は致死的だが、HV cl‐2株は全く病原性を示さない。そこで、この2株間の遣伝子の塩基配列の比較を行ったところ、Mセグメント上に唯一、1124番目のアミノ酸のSerがHV cl‐2株ではGlyに変異していた。この変異がHV cl‐2の細胞融合能の低下とCTL誘導能を増加に関与し、その結果、マウスに対する病原性が低下したものと考えられる。 3)ラットの場合、ウイルスキャリアは持続感染個体であり、しかも血清中にはウイルスは検出されず、骨髄細胞と白血球中においてのみRNA依存RNAポリメラ-ゼだけが検出される個体も存在する。Hantavirusに49年前に感染し、今では抗原は全く検出されないが、高い抗体価を有するヒトの血液からHantaan型のウイルスゲノムが検出された。これは人においてもウイルスが遣伝子だけで長期間個体内に存在することが示している。
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