研究概要 |
今年度はとくに,マイコプラズマ肺炎を重症化し遷延化する因子の存在について,受身免疫実験系の成果を中心に,以下にまとめてみた. <1.肺炎形成(重症化)因子の存在と,その作用の仕方>___ー:<M.pulmonis>___ー感染10週目の肺炎マウスから採取した血清(肺炎血清)をマウスに受身免疫すると,その感染防御率は,投与血清の希釈倍率が進むに従い低下をみるのは10^<-2>までで,それ以上の希釈(10^<-3>〜10^<-5>)血清の投与例では,感染対照より重症の肺炎がみられた.このことは,感染防御抗体が10^<-3>倍希釈で殆ど失われ,希釈されても残っている肺胞上皮基底膜抗原などと反応する抗体,免疫複合体,種々の免疫抑制性蛋白因子などの作用により,炎症が修飾されていることを示唆している(第17回日本マイコプラズマ学会で報告,1990.5.26). <2.マイコプラズマ肺炎の特性である肺炎の遷延化にかかわる抗原>___ー:上記の所見から,マイコプラズマ肺炎の典型的例は,一度肺炎を起こしたマウスは,殆ど一生肺炎と持続感染が続くが,それは,肺炎血清がもつ感染防御と肺炎成形阻止抗体は,肺炎重症化連因子より量的に少ないことが,主原因の一つであるとみることを可能にしていると思われた. 一方,生菌免疫マウスは,造血系やリンパ系臓器内で保菌しながら,免疫の程度に比例して感染を防御し,感染6ケ月を経ても,肺炎を悪化するような因子の産生はほとんど認めることができなかった. 以上の所見と,過去の成績を合わせて検討すると,マイコプラズマ肺炎は,菌が肺で増殖して起きる宿主の種々の反応と、その産生物による複雑な感作の結果ではあるものの,やはり,そこに特定の抗原や物質がそれぞれの役割分担に従って肺炎を構築し,規定していると思われる. 従って,現在,とくに肺炎構築上の最重要課題である肺炎の遷延化抗原と,感染防御抗原の同定と確認のための種々の実験を行っている.
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