研究概要 |
Streptomyces Subtilisin Inhibitor(SSI)とSubtilisinとの複合体の1.8A分解能での構造の精密化を行った。SSIがSubtilisinと結合すると、SSIの構造のある特定の部分(全体ではなく)のflexibilityが減少する。このflexibilityの減少は、Subtilisinと直接的に接触している。“reactive site"segmentだけではなく、このsegmentと共有結合またはvan der Waals接触によって隣接しているにすぎないsegmentsにも見られる。以上のように、複合体を形成することにより、Subtilisinの活性中心と直接接触する反応部位だけでなく、その周辺のポリペプチド鎖もリジッドになることが分かった。即ち、複合体形成に伴うSSI分子の硬化(rigidification)は分子全体に均一に起こるのではなく、局在化しているが、その部位は必ずしも標的酵素Subtilisinと直接接しているところとは限らないことが、はっきり示されたわけである。 さらに遺伝子工学的手法によりSSIの反応部位P1(Met73)、P4(Met70)をそれぞれLys,Glyに変換した2種の変異SSI(Met73Lys)、(Met73Lys,Met70Gly)とSubtilisinとの複合体のX線解析を行った。SSIの反応部位P1及びP4のアミノ酸残基の変換にり、Subtilisin側も静電的相互作用、van der Waals接触などにより微妙に動くことが明かとなり、今後の蛋白質工学の指針となるのであろう。
|