部位特異性突然変異法によるトランスアミナ-ゼ活性域の研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480524
• 研究機関: 大阪医科大学
• 研究代表者: 鏡山 博行 大阪医科大学, 医学部, 教授 (80028555)
• キーワード: 部位特異性突然変異 / トランスアミナ-ゼ / アスパラギン酸アミノ基転移酵素 / 酵素反応機構 / 酵素の活性中心 / 蛋白質工学

研究概要

X線結晶解析デ-タにもとずいて、siteーdirected mutagenesisの手段によって、大腸菌アスパラギン酸トランスアミナ-ゼの部位特異的変異体を多種作成し、昨年度に引続き反応機構の解明を目指して研究を続行した。置換の対象となったアミノ酸残基の役割りを解明するためには、野生型酵素の反応動力学的、熱力学的解析を詳細に行っておかなければならない。本年度はその点から研究を開始した。ストップドフロ-法を駆使して野生型酵素を解析し、諸種のパラメ-タ-を得て、本酵素の反応特構についてのスキ-ムを確立することができた。次後それにのっとって変異型酵素の解析を進めた。
Trp140は一次構造の決定されたアスパラギン酸トランスアミナ-ゼすべてに保有されていて、そのインド-ル環が、反応中に動く補酵素ピソドキサル燐酸を支えることで、反応過程に必須の役を果しているものと考えられている。この残基とフェニルアラニンとグリシンに置換すると活性は著明に減少した。しかし、天然の基質であるジカルボン酸に対するKmは増大するが、芳香族基質に対するKmには変化がなかった。一方、反応速度に対する影響は、グリシン置換体では著明なのに、フェニルアラニン置換体では少かった。Trp140は触媒作用には必須でなく、ジカルボン酸の認識に関与していることが示された。Tyr70もすべての野生型酸素に保存されているものであり、補酵素をつなぎとめるのに必要とされている。この残基をフェニルアラニンとセリンに置換したところ、前者では20%の残存活性があったが、後者では活性は認められなかった。結晶解析によりベンゼン環の位置に変動はなかった。反応動力学的パラメ-タ-より、Tyr70はC4基質しアスパラギン酸とオキザロ酢酸)の認識には無関係であるが、C5基質(グルタミン酸とαーケトグルタル酸)の認識に深く関っているという新して知見を得た。

研究成果

• [文献書誌] MoonーHee Sung: "Purification and Characterization of Thermostable Aspartate Aminotransferase from a Thermophilic Bacillus Species" J.Bacteriol.172. 1345-1351 (1990)
• [文献書誌] Hideyuki Hayashi: "Effects of replacement of tryptophav 140 by phenylalauine or glycine on the function of Escherichia coli aspartate aminotransferase" Biochem.Biophys.Res.Commun.167. 407-412 (1990)
• [文献書誌] Seiki Kuramitsu: "Preーsteady state kinetics of Escherichia coli aspartate aminotransferase catalyzed reactions and thermodynamic aspects of its substrate specificiry" Biochemistrg. 29. 5469-5476 (1990)
• [文献書誌] Yoshimasa Morino: "Mammalian aspartote aminotrausferase isozywes:fron DNA to protein" Ann.New York Acad.Sci.585. 32-47 (1990)
• [文献書誌] Shigehiro Kamifori: "Three dimensional structures of aspartate aminotrausferase from Escherichia coli and its mutaut euzymu at 2.5A^^ﾟ resolution" J.Biochem.108. 175-184 (1990)
• [文献書誌] Katsura Inoue: "SiteーDirected Mutagenesis of Escherichia coli Aspartate Aminotransferase:Role of Tyr70 in the catalytic Proess" J.Biochem. (1991)