研究概要 |
GH4C1細胞にプロテインキナ-ゼC(PKC)α,β,εが発現していることを明らかにしたので,この細胞を使ってPKCの挙動を調べた。GH4C1細胞を生理的な刺激であるサイロトロピン放出ホルモンで刺激すると,nPKCεのみが特異的にダウンレギュレ-トされ,αβはダウンレギュレ-トされなかった。また、ホルボ-ルエステル(TPA)ではβとεが消失したが,αは消失しなかった。これらのことから,PKC分子種は各々別個の機能を持ち,特に,εが生理的なシグナルを伝達することが明らかになった。一方カルシウムプロテア-ゼ(CANP)の遺伝子の構造を解析し,CANPがTPAで遺伝子発現が誘導されるシス配列TREを持つことを明らかにした。事実、ラット線維芽細胞3Y1をホルボ-ルエステルで刺激すると,mCANPの大サブユニットと小サブユニットの発現誘導が見られた。このことはTPA刺激によってmCANPのレベルが特異的に上昇することを示している。CANPの特異的なインヒビタ-カルパスタチンのcDNAを3Y1細胞で発現させると,JUNによるTRE・遺伝子の発現の増強がみられ,さらに同インヒビタ-のアンチセンスCDNAを発現させるとその増強が解除されるだけでなく,強い阻害がみられた。このことはcANPがJUNを介しておこなわれるα遺伝子発現に関与することを示している。以上の結果,細胞に刺激が伝わると,PKCとCANPは共に細胞質から細胞膜へ転移しリン脂質,カルシウム等の存在下に両酵素が同時に活性化される。PKCは自己リン酸化をおこと,CANPはこの自己リン酸化されたPKCのみを分解する。一方PKCはCANPの遺伝子の発現も強め,結果的にCANPレベルが増加し,PKCの分解増強につながる。CANPはPKCおよび転写因子の分解を通じて情報の伝達をコントロ-ルする。
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