研究概要 |
ATPの分解と共役してHAA+BBを輸送するATPaseが知られている。このようなATPaseのうち大腸菌の細胞膜のHAA+BBーATPase(ミトコンドリアのHAA+BBーATPaseに対する)、胃壁細胞に存在し胃酸分泌に関与するHAA+BB/KAA+BBーATPase、神経末端のシナプス小胞および分泌顆粒に存在するHAA+BBーATPaseに注目した。ATPの分解とHAA+BBの輸送という化学反応とべクトル反応を共役する酵素として比較生化学的に研究を進めると同時に、普遍的に理解することを目的とした。以下に2ヶ年の研究成果を要約する。 1.変異導入と化学修飾によって大腸菌細胞膜のHAA+BBーATPaseの活性中心の構造のうち、ATPのγ位のリン酸基近傍の構造が明らかとなった。 2.大腸菌の細胞膜HAA+BBーATPaseのHAA+BB輸送路が3種のサブユニット(a,b,c)より作られていること、特にaIIーJJサブユニットのArgー210残基がHAA+BBの授受に関与していることが明らかとなった。 3.胃酸分泌酵素HAA+BB/KAA+BBーATPaseのcDNAおよび遺伝子をクロ-ン化し、塩基配列を決定した。また、化学修飾により活性に関与するアミノ酸残基を同定した。このような研究を通じてHAA+BB/KAA+BBーATPaseの活性中心とHAA+BB通路を推定した。さらにHAA+BB/KAA+BBーATPaseが胃壁細胞において特異的に転写されており、遺伝子の上流にこの転写に関与するモチ-フがあることを明らかとした。さらにこのモチ-フに結合するタンパクを同定した。 4.シナプス小胞の膜の20%がHAA+BBーATPaseであること、このATPaseは液胞型ATPaseに属することを明らかとした。このHAA+BBーATPaseが形成するHAA+BBの電気化学的ポテンシャルが神経伝達物質をシナプス小胞内へ輸送する駆動力となっていることを証明した。さらにHAA+BBーATPaseの膜内在性サブユニットのうち、HAA+BB輸送路を形成している分子量16,000のサブユニットのcDNAをクロ-ン化し塩基配列を決定した。このサブユニットの遺伝子をクロ-ン化し検討したところ、少なくとも3種類あることを証明した。HAA+BBーATPaseを普遍的に理解できるようになった。
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