研究概要 |
分子量2万余りのGTP結合蛋白質(低分子量G蛋白質)をコ-ドする遺伝子は哺乳類から酵母にいたるまで40種類以上存在し、種々の細胞機能を制御していることが示唆されている。本研究で私共は低分子量G蛋白質の翻訳後修飾、活性制御機構と機能を解析した。まず、私共はC末端側の構造がCysーAーAーXであるsmgp21BとrhoAp21の翻訳後修飾を解析して、両低分子量G蛋白質のC末端側のCys残基にはrasp21のファルネシル基とは異なるゲラニルゲラニル基が結合し、AーAーX部分は取り除かれ、Cys残基がメチル化を受けることを明らかにした。また、C末端の構造がCysーXーCysであるsmgp25Aでは、少くとも一方のCys残基にゲラニルゲラニル基が結合していることも明らかにした。これらの翻訳後修飾は低分子量G蛋白質の細胞膜への結合に必要であった。低分子量G蛋白質はGDP結合型の不活性型とGTP結合型の活性型が存在し、不活性型と活性型の転換を制御する蛋白質や活性型が作用する標的蛋白質が存在すると考えられている。私共は低分子量G蛋白質の活性制御蛋白質として、smgp21とrhop21に対するGTPase活性促進蛋白質(GAP),smgp25Aとrhop21に対するGDP解離抑制蛋白質 (GDI),smgp21とrhop21に対するGDP解離促進蛋質(GDS)を見出した。さらに、smgp25AGDI,rhoGDI,smgp21GDSのcDNAを単離してそれらの一次構造を決定した。また、GDIとGDSは低分子量G蛋白質の細胞膜への結合を制御することも明らかにした。smgp21はAキナ-ゼによりリン酸化された。また、smgp21はrasp21GAP活性を抑制した。さらに、smgp25Aは分泌反応に関与し、Cキナ-ゼ系やCa2+系の下流に存在することが示唆された。このように、低分子量G蛋白質はその活性制御蛋白質とともに既知の細胞内情報伝達系や未知のそれとクロスト-クしながら、細胞機能を制御していると考えられた。以上の成績を得たことにより、本研究の研究計画はほぼ達成できたと考えられている。
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