まず、マウス小腸上皮細胞群の分画方法を確立させた。すなわち、マウス体内より切り出し、さらに内外を反転した小腸組織から出発し、じゅう毛の先端部分から増殖単位であるクリプトの底部に至るまで、順次、細胞群を取り外しながら分画して行った。細胞群の取り外しには化学的方法と物理的方法とを組み合せて使用した。細胞分画実験での5段階の操作で使用する溶液として、種々の薬品、キレ-ト剤、栄養源等の量を変え、各操作に最適な組成を探し出した。物理的方法としては、ボ-テクスにより溶液中での振とうで細胞を順次剥離した。 次に、I-125でラベルされたデオキシウリジンをマウス腹腔に投与し、上記操作にて小腸上皮細胞群の分画を行い、取り込まれた放射能をガンマカウンタ-にて測定した。さらに、酸不溶分画でもってDNA中に取り込まれている放射能を測定した。放射能は最初の分画では酸可溶性部分に多く出現するが、その後はほとんど不溶性部分に存在する。さらにI-125の放射能値のピ-クが1.5〜2.0時間の時点に出現するように操作を改良し、分画方法を確立した。 マウスの下半身を10Gyで照射し、腸上皮回復期間中(照射後18時間から5日目まで)6時間ごとにH-3チミジンを17回投与した。これにより、幹細胞はH-3でラベルされる。幹細胞以外の小腸細胞はたとえH-3チミジンを取り込んでも、約3.5日で腸管へ捨てられるが、幹細胞のラベルは長時間クリプトに存在する。こうして作成したラベルされた幹細胞をもつマウス小腸において、幹細胞が上記操作で得られるどの分画に入っているかを現在調べている。
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