研究概要 |
これまでにマウス小腸上皮細胞群の分画方法を確立させてきた。すなわち、マウス体内より切り出し、さらに内外を反転した小腸組織から出発し、じゅう毛の先端部分から増殖単位であるクリプトの底部に至るまで、順次、細胞群を取り外しながら分画していく方法である。また、マウス下半身に10Gyを照射し、照射後0.5〜5日にかけてのHー3チミジン反復投与法によりマウス腸上皮の幹細胞がラベルできることを前年度までに確認した。今年度はこのように腸上皮幹細胞をHー3チミジンでラベルしたマウスを長期間飼育し、0.5,1,2,3,4カ月の各時点でCー14チミジンを1回投与し、30分後に腸上皮の細胞群の分画操作を行い、液体シンチレ-ションカウンタ-にて、それぞれの放射能を測定した。幹細胞の分画(Hー3)はDNA合成細胞の分画(Cー14)と同一ではなく、しかもクリプト底部に対応した分画であることが示された。 同様にして幹細胞をラベルしたマウスを作成し長期間飼育した後、ガンマ線照射で細胞死を起こす細胞つまり放射線高感受性細胞とHー3チミジンを何ヵ月も保持する細胞(幹細胞)との同一性を調べた。長期間ラベルを保持している細胞は休止期にあると考えられるが、このような細胞のクリプト内分布はクリプトの底部からの細胞位置で3番目近くにその中央値を示した。これに対し、0.5Gyまたは9.0Gyのガンマ線照射によって細胞死を起こした細胞のクリプト内分布は5番目付近に中央値を示した。つまり、長期間ラベルを保持する細胞と放射線高感受性細胞とは別の細胞集団であることが示された。
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