発生停止温度感受性変異株を計画調書の方法で数百株分離した。これらは、いずれも発生停止が一様には起こらず、形態が特に変ってはいなかった。それで、絶対致死の発生停止変異株を分離・研究することにした。 C.elegans N2株をメタンスルホン酸エチル(EMS)処理して変異を誘起し、多数の致死変異株を分離した。この中から形態に異常のあるもの9株を選んでこれに研究を集中し、方法の確立を行った。これらの形態の異常は、体が2〜4回折り畳まれている、頭が丸い、皮膚の輪郭が不規則、脱皮が出来ない、体壁と腸の間の屈折率が低い、などであった。これらの変異のおよその位置をつきとめ、付近にある既知の形態変異とヘテロ接合体を作り、この状態で変異株の維持を行うようにした。現在、トランスポゾンTc1を挿入するミュ-テ-タ-株を用いて同様の実験を行っている。EMSによる変異株は多く分離できるので変異の枚挙に用い、Tc1挿入変異株はTc1をプロ-ブとして遺伝子クロ-ニングに用いる計画である。来年度は、変異株の分離を続けるとともに、微分干渉顕微鏡・蛍光染色・生化学反応測定などで表現型をより詳細に調べたい。 耐性変異株では、既に分離してあったフッ素イオン耐性変異株をさらにいくつか分離した。マッピングを行ったところ3つの遺伝子flr-1(X染色体上、unc-9の0.4単位右)、flr-2(第V染色体上、unc-76付近)flr-3(第IV染色体上、dpy-9付近)同定された。現在、二重変異株の構築とflr-1遺伝子のクロ-ニングを行っている。
|