研究概要 |
本研究の目的は、ヒト染色体動原体の構造形成と機能発現に必須なDNA配列と蛋白質因子を明らかにし、細胞周期における染色体分配の制御機構解明への足がかりを得ることにある。これまでの解析で以下のことが明らかとなった。 1.セントロメア領域にはアルフォイドDNA(α-satelliteDNA)と呼ばれる170塩基対を基本単位とした高度反復配列が存在している。 2.セントロメア領域には抗セントロメア抗体抗原蛋白(CENP-A,B,C)が検出される。CENP-B(80KD)とCENP-C(140KD)は0.5MNacl溶液で核より抽出されるがCENP-Aの抽出にはより高塩濃度の処理が必要である。 3.CENP-B蛋白とアルフォイドDNAとはアルフォイド上の17塩基対の特異配列上で複合体を形成する。 4.この特異配列がY染色体をのぞくすべてのヒト染色体上に存在することがPCR反応を用いて確認された。マウスにおいてもこのモチ-フと16塩基対まで一致する配列がすべての染色体セントロメア領域に見出された。 5.17塩基対モチ-フの繰り返しDNAを用いたアフィニティカラムクロマトグラフィにより、HeLa細胞よりCENP-B蛋白を約2万倍に精製した。 6.17塩基対を含むアルフォイドDNAとCENP-B蛋白との間で、多種類の複合体が形成されることが判明した。今後は、抗原蛋白遺伝子のクロ-ニングとアルフォイドDNA配列の生理機能についても研究を進める。
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