研究概要 |
本研究の目的は、ヒト染色体動原体の構造形成と機能発現に必須なDNA配列とタンパク質因子を明らかにし、細胞周期における染色体分配の制御機構解明への足がかりを得ることにある。昨年度までの解析で以下のことが明かとなった。1.セントロメア領域にはアルフォイドDNA(αーsatellite DNA)の高度反復配列が存在している。2.セントロメア領域には抗セントロメア抗体抗原蛋白(CENPーA,B,C)が検出される。3.CENPーBとアルフォイドDNAとはアルフォイド上の17塩基対の特異配列(CENPーB box)上で複合体を形成する。4.CENPーB boxがY染色体をのぞく全てのヒト染色体上に存在する。マウスにおいてもこのモチ-フと16塩基対まで一致する配列がすべてのセントロメア領域に見出される。 本年度は以下の成果を得た。1.セルソ-タ-を用いて分離したY染色体由来DNAをPCRを用いて解析し、Y染色体上にもCENPーB boxが存在する可能性を見出した。2.マウス、シカ、サル細胞核抽出液中にCENPーB boxと特異的に反応するセントロメア抗原蛋白を検出した。1,2の結果はCENPーB boxとCENPーBとの反応が広く哺乳動物染色体に存在することを示している。3.CENPーB boxを用いてアフィニティ精製したCENPーB蛋白を用い、CENPーBとDNAとの相互作用の詳細を解析した。CENPーBは二本のDNA鎖との間で複合体を形成することが明かとなり、セントロメア領域でのアルフォイド繰返し配列による高次構造形成に働いていることが示唆された。
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