T3ファ-ジDNAは両端に230bpの未端重複(TR)配列をもつ。ファ-ジDNAはこのTR配列を介してhead-to-tailに連らなった巨大分子(コンカテマ-)として合成され、頭部形成の際、コンカテマ-から、TR配列を両端にもつゲノムDNAが切り出され(DNA成熟)頭穀内に詰込まれる。DNA成熟はDNA詰込みに依存している。 コンカテマ-からTR配列を含むDNA断片をプラスミドにクロ-ンすると、T3ファ-ジはこのプラスミドを頭部に詰込み、他の細胞に形質導入する。この形質導入系を用い、DNA詰込みに必要なDNA配列(pac配列)を200bpにまで限定出来た。pac配列はまたDNA成熟反応の標的配列でもある。pac配列をもつ組換えプラスミドを、精製した因子からなるin vitro DNA詰込み反応系に加えると、DNA詰込に共役してTR配列の左端で2重鎖DNA切断がおこることを見出した。このin vitro切断反応の解析から、DNA成熟反応はDNA詰込みの開始に必要なDNA端を創り出す開始切断と、コンカテマ-からゲノムDNAを切離すための終結切断の2つの素過程よりなること、in vitro系でみられた切断反応は終結切断であることが明らかになった。これらの結果に基づいて、今日受け入れられているJ.D.Watsonの提唱したT3(T7)ファ-ジのDNA成熟反応に関するモデルが誤りであることを示し、新しいモデルを提唱した。
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