遺伝的組換えはDNA塩基配列に相同性にある領域内で起る相同性組換えと相同性がないにもかかわらず組換えの起る非相同性組換えに大別され、後者は転移、逆転、挿入、欠失なで種々のDNA再編成を引き起して遺伝子の発現にも影響を与える。DNA再編成は部位時異的組換えのようにDNA上のどの部位でどのような再編成が起るかがあらかじめプログラムされている場合と、転移因子の関与する再編成にようにプログラムされていない場合に分けられる。本研究では種々の非相同性の遺伝的組換えによるDNA再編成とその遺伝子発現への影響との関連を解明することをめざして、以下の組換え系で研究を行った。 (1)部位時異的換えとして、大腸菌15T^ーのプラスミドp15Bには部位時異的組換え点が6点ある、これらの間で起る組換えにより240通りの構造をとりうる多重DNA逆転領域がある。この領域中に見い出された遺伝子の構造と機能や細換え酵素遺伝子の構造を明らかにした。 (2)転移因子による組換えとして、トウモロコシの転移因子AcやDsが転移に伴って切り出されると薬剤耐性遺伝子が活性化されるようなプラスミドをタバコとイネのプロトプラストに導入、活性化された耐性遺伝子を指標として形質転換体を分離、作出したトランスジェニック植物中での導入転移因子の転移を検討した。 (3)高等植物の挿入突然方異法開発のための基礎研究として、プロモ-タ-を持たぬ導入標識遺伝子が植物遺伝子のエキソンに挿入されて活性化された場合を想定し、二種の薬剤耐性遺伝子がdicistronic mRNAの生成により発現されるようなプラスミドをタバコに導入、両耐性を示すトランスジェニックタバコを得て種子繁殖を行い、両耐遺伝子が安定に次世代へ伝達されることを明らかにした。
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