レチナ-ルタンパク質は、視物質のように、光情報を変換するもの、バクテリオロドプシンのように、光エネルギ-を電気化学的エネルギ-に変換するもの、レチノクロムのように光をコファクタ-として利用して異性化酵素のように働くものなど、タンパク質によってその機能は異なる。しかし、光を吸収する発色団はレチナ-ル(ビタミンAアルデヒド)である。遊離のレチナ-ルは近紫外部に吸収を持つが、色素の色はタンパク質によって異なっている。これらの差はタンパク部分の差にあるが、レチナ-ルタンパク質が膜タンパク質で結晶化が困難でまだ成功していないので、機能、色の差の実体が何であるのか明確でない。そこで、本申請研究では、水溶性で分子量(21kD)も小さくかつ結晶化もされ、3次元立体構造が明らかになっているレチナ-ル結合タンパク質を用いて、遺伝子操作でモデルタンパク質を作り、各種あるレチナ-ルタンパク質の差異の起源を明らかにすることを目的としている。 本申請研究でモデルタンパク質とするレチノ-ル結合タンパク質は、既にそのアミノ酸配列や、三次元立体構造が明らかにされている。そこで、それらの報告をもとに、レチナ-ルを結合して視物質やバクテリオロドプシンのように発色する可能性のあるタンパク質の設計をした。そして、レチノ-ル結合タンパク質の一次構造は明らかになっているので、そのアミノ酸配列に従って、DNA合成機で人工的にcDNAを合成した。合成したcDNAを発現プラスミドに組み込み、それで大腸菌を形質転換し、タンパク質を大量に作るように工夫している。
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