レチナ-ルタンパク質は、視物質、バクテリオロドプシン、レチノクロムなどあるが、タンパク質によってその機能は異なる。しかし、光を吸収する発色団はレチナ-ルである。遊離のレチナ-ルは近紫外部に吸収を持つが、色素の色はタンパク質によって異なっている。これらの差は、タンパク質部分の差にあるが、レチナ-ルタンパク質が膜タンパク質であり結晶化が困難で、結晶解析はまだ成功しておらず、機能・色の差の実体が何であるのか明確でない。そこで、本申請研究では、立体構造の比較的明らかにされているものを対象として、遺伝子操作の助けを借りて、各種あるレチナ-ルタンパク質の差異の起源を明かにすることを目的とする。レチノ-ル結合タンパク質と同様βバレル構造を持つβラクトグロブリンを用いてレチナ-ル結合実験を行なったが、結合状態を示す明確なスペクトル変化は検出出来なかった。プロトン化レチナ-ルブチルアミンシッフ塩基を結合させたが、結合定数が小さいことが分かった。バクテリオロドプシンは膜を貫く7本のαヘリックス(各ヘリックスをABCDEFGと名付ける)からなる。7本のαヘリックスを4本と3本に分けたペプチドに対応するDNAを作った。これを発現ベクタ-に入れ、大腸菌で発現させ、分離精製し、再構成実験を行なっている。ヘリックスA及びBをそれぞれ化学的に合成し、それとバクテリオロドプシンをキモトリプシン処理して得られたヘリックスCーGを含むペプチドからバクテリオロドプシンを再構成した。この産物は天然のものと同様560nmに吸収極大を持つもの(P560)と、480nmに吸収極大を持つもの(P480)の平衡混合物であった。ヘリックスAとBの間のペプチドを切断することによってこの現象が起こる。ヘリックスA、Bに色に影響を与える残基があることが予想されるので以後、DNAを用いて変異タンパク質を作り検討する。
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