レチナ-ルタンパク質は発色団レチナ-ルを共通に持つタンパク質であるが、タンパク部分が異なることにより、色・機能が異なる。バクテリオロドプシン・視物質・レチノ-ル結合タンパク質・レチノクロムについて発色機構・機能発現について比較した。バクテリオロドプシンについては部分ペプチドを用いて再構成し、その性質を調べた.化学的に合成したヘリックスA及びヘリックスBと天然のバクテリオロドプシンから調製した残りのヘリックスCーGを用いて再構成出来た。天然のものと同じ色のものと、480nm付近に吸収極大を持つものが生じた。これらは熱的に平衡にあり、各々個々に光反応サイクルを起こした。バクテリオロドプシンの発色にヘリックスAとBに有るアミノ酸残基が関与していることを示している。この研究を系統的に行うために組換えDNA技術により大腸菌でバクテリオロドプシンの部分ペプチドを合成させることに成功した。また機能発現時にへリックスBとGが動くことをX線回折実験から明かにした。視物質については各種動物の視物質のアミノ酸配列と色を比較した。脊椎動物では5色を基本として視物質遺伝子が進化してきたことが強く示唆された。各系統で保存されているアミノ酸残基が各色を発色させるのに働いているものと思われる。レチノ-ル結合タンパク質と同様βバレル構造を持つβラクトグロプリンを用いてレチナ-ル結合実験を行なった。結合状態を示す明確なスペクトル変化は検出出来なかった。そこでレチナ-ルとブチルアミンとから作ったシッフ塩基及びそのプロトン化シッフ塩基を結合させたが、結合定数が小さく、結合産物の解析に工夫が必要であることが分かった。レチノクロムの発色の基本として他のレチナ-ルタンパク質と同様プロトン化シッフ塩基結合をしていることによることが明らかになった。また機能発現時に、カルボキシル基の脱プロトン化を伴っていることが分かった。
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