研究概要 |
1.準安定2次構造の予測:Ffファ-ジ-本鎖DNAを鋳型とし,種々のプライマ-を用いて伸長反応を行わせた後,制限酵素の切断パタ-ンを解析すれば,鋳型鎖の準安定2次構造やプライマ-結合特異性のデ-タが得られる。後者に注目し,2次構成形成の熱力学的パラメ-タを用いた理論計算結果と比較した。実験結果を概ね説明できるが,理論モデルとパラメ-タを改良してさらに精密化する必要がある。この応用として,プライマ-の特異性を低くしてPCRを行い,その結果を温度勾配ゲル電気泳動で分析することにより,鋳型DNAの分類を行うDNAプロフィ-リング法を開発したが,そのプロフィ-ルを理論的に求めるプログラムを開発した。 2.核酸構造とゲル電気泳動易動度との関係:ゲル電気泳動を行うと同時にゲルの温度を,DNAの変性温度付近で変化させれば,DNAの2次構造の熱安定性を電気泳動易動度の差として検出できる。この温度掃引ゲル電気泳動法を開発した。この方法の理論を確立し,従来の温度勾配ゲル電気泳動法と比較したところ,多くの場合わずかに良い分解能が得られることがわかった。GCクランプ法と併用し,260塩基の内の1塩基置換を実験的に検出した。 3.DNA合成反応速度に基づく準安定構造の測定:開発済のISFET差動型pHセンサ-を用いると20μlの反応液中のpH変化を時間分解能2秒で測定できる。DNAポリメラ-ゼによる鋳型合成反応は水素イオンの吸収を伴うので,緩衝能を低くしておけば,この反応の時間経過を,この微小センサ-で測定できる。プロセシビティが中庸のクレノ-酵素を用いて反応速度を測定した結果,鋳型鎖に準安定2次構造がない領域では,伸長反応は速く,多い領域では遅く,安定なヘアピン構造の根元では,伸長が止る傾向にあるとの知見を得た。
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