病原性大腸菌による仔牛および仔豚の下痢症は被害額も多く、未だ有効なワクチンが開発されていない。大腸菌は体表面に存在する線毛によって宿主細胞に付着する。線毛にはその抗原性の相違により、いくつかのVariantsの存在が知られている。われわれはその代表としてK99抗原性を示す大腸菌線毛について研究した。 1)宿主レセプタ-物質の日令による変動 以前われわれはK99線毛が宿主の糖脂質、NeuGcα-3Galβ1-4Glc-ceramideを認識することを明かにした。本物質の仔牛および仔豚での小腸における動態を調べたところ、このガングリオンドは生後直後より増加し1日後には生前の10倍以上になることが判った。その後一週間は同じ濃度を維持するがその後急激に減少し、成牛では20分の1に減少した。このことと大腸菌症の発症が生後一週間以内に主にみられることとは関係があるものと推測された。 2)遺伝子組換えによる付着因子の分離 K99線毛の発現に必要な遺伝子群はA〜Hの8つの遺伝子より成る。このうちC遺伝子がK99抗原性を示す主要タンパク質(フィンブリリン)をコ-ドしていることが判ったので、この遺伝子の欠損株を作出したところ宿主付着活性(アドヘシン活性)のあるミュ-タントが得られた。 更に研究を進めるため、未だ塩基配列の決定されていないEとF遺伝子の塩基配列を決定することに成功した。この遺伝子産物にアドヘシン活性が認められるか否か現在検討中である。
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