研究概要 |
K99線毛抗原の有する 毒素原性大腸菌より線毛構築に必要な8つの遺伝子群(fan A〜fan H)を組換えた宿主大腸菌を増殖させ,塩基配列のわかっていないfan Eとfan Fの遺伝子について検索した。fan EはGTG(Val)から始まる227個のアミノ酸をコ-ドしており、20個のシグナルペプチドをコ-ドしていた。fan Eは271個のATG(Met)から始まるアミノ酸をコ-ドし、成熟ペプチドは251個のアミノ酸より成っていた。両タンパク質のうちfan Fは他の大腸菌P線毛のアドヘシン遺伝子およびType1線毛のアドヘシン遺伝子と類似性を示した。従ってfan F産物がアドヘシンである可能性が示唆された。アドヘシンは過去の研究で仔ブタおよび仔ウシ小腸のガングリオシドGM3を認識することがわかっている。このガングリオシドはウマ赤血球の主要糖脂質成分であり,K99線毛画分はウマ赤血球凝集反応(HA)を起す。従ってHAによりアドヘシン活性を検出することを試みた。fan Eおよびfan Fの遺伝子を別々にPCR法にて合成し,これを発現ベクタ-pGEMEX^<TM>につなぎEサブユニットとFサブユニットの発現量を別々に増幅した。Fサブユニットは菌を溶解したときの膜画分でHA活性を示したが,上清画分ではHA活性を示さなかった。しかしこの上清画分にEサブユニットを含む上清画分を加えたところHA活性が出現した。Eサブユニットのみには全くHA活性が認められないところから,EサブユニットとFサブユニットが復合体を形成したときにHA活性が発現することがわかった。以上よりFサブユニットがアドヘシンであり,EサブユニットはFサブユニットの囲りに存在してアドヘシン活性を発現させる役割を担うことが明らかとなった。
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