高齢化社会の到来と共に増加しつつある露出根面象牙質の知覚過敏症や齲蝕、更には歯ブラシなどによる歯頸部の実質欠損等に対処しえる材料並びに処置法を開発し、臨床に応用すべく試作された可視光線重合型低粘性レジンに対し、その接着性、耐磨耗性を中心に基礎的な検討を行なったところ次のような知見が得られた。(1)2種の試作根面塗布材の牛歯象牙質に対する引っ張り接着強さは、SAprimerを併用しない場合には約70kgf/cm^2であったが、SAprimerを併用することにより約120kgf/cm^2前後にまで有意に上昇した。(2)サ-マルサイクリング後の試作根面塗布材の牛歯象牙質への密着適合性を色素浸透試験並びに半切面のレプリカ模型のSEM観察によって評価したところ、SAprimerを併用しない場合には一部の試片の境界面に間隙が認められたが、SAprimerを併用することにより極めて良好な密着適合性が得られた。(3)試作根面塗布材を荷重400gで10万回の歯ブラシ磨耗試験に供したところ、その磨耗量は、一般的な前歯部修復用レジンであるフォトクリアフィルブライトに比べて若干多いものの重量で2〜3%、厚さでも10μm前後であり、臨床的に十分な耐磨耗性があることが予測された。(4)試作根面塗布材の重合時に、空気中の酸素によって重合が阻害されるいわゆる未重合層の幅は約20μmであった。 更に今年度購入したダイナミック超微小硬度計を用いて根面象牙質の各部位の微小硬さを測定し、また根面塗布材の適応のための各種面処理が根象牙質にどのような影響を与えるかについて目下検討中である。
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