研究概要 |
メ-プルシロップ尿症(MSUD)は分枝鎖ケト酸脱水素酵素(BCKDH)のうち、E_1α,E_1β,E_2サブユニットのいずれかの障害でおこる、常染色体劣性遺伝病である。MSUDの分子遺伝研究のため次の研究を行った。 (1)ヒトE_2サブユニットの全構造解析・抗E_2サブニット抗体を作成し、それを用いてcDNAライブラリ-をスクリ-ニングし、20クロ-ンを得た。それを解析して、E_2 cDNAは 1.431塩基より成り、477のアミノ酸をコ-ドしていること、また成熱酵素は421のアミノ酸からなること解った。 (2)ヒトE_1βサブユニット cDNA及びゲノムDNAの全構造解析 まずウシのE_1βサブユニットを純化し、そのアミノ酸構造の一部を解読した。その結果を基に、合成オリゴを作り、それをプロ-ブとして、E_1β cDNAをクロ-ニングした。それを用い、次にヒトE_1βサブユニットcDNAをクロ-ニングし、全構造を解析した。さらに次に、それをプロ-ブにして ゲノムDNAライブラリ-をスクリ-ニングして、全長100kb以上で、10エクソンから成り、GT/AGル-ルに従ってスブライスされることが解った。 (3)MSUD変異遺伝子解析:これまでE_1αのT→A変異(394のチロシン)がアスパラギンに変異していることがメノナイトMSUDで見いだされた。なおメノナイト3家系調査の結果、6名の后患者はすべてこの変異のホモであり、両親はヘテロであることを確認した。我が国でのMSUDの2家系での解析で、最初の家系ではE_2のスプライシング異常のため78塩基対の欠失がおきていること。次の家系ではE_1βの第一エクソンのダイレクトリピ-トの11塩基対が欠失していることを解明した。
|