研究概要 |
1.顎関節雑音と顎運動機能について 顎関節雑音を有するものは,顎機能障害を潜在していることが示唆され顎関節雑音が顎関節症の予防管理の鍵症状である。しかしながら,小児の咬合変化と顎運動がどのように発育しているか解っていない。そこで平井は,Hellmanの咬合発育段階IIA,IIIA,IVAの正常咬合者33名を対象に顎運動を検討した結果,次のような知見を得た。すなわち,咬合発育段階の進行に伴い下顎運動範囲は側方,前方,下方ならびに後方へ拡大し,限界位のばらつきは減少した。また,咬合発育段階の進行と共に滑走運動路の傾斜角は急になる傾向を示した。 2.顎関節部の形態と顎関節症症状との関係について 我々はFCRの矢状断と前頭断断層像による顎関節部内の立体的評価を試みた。その結果によると,下顎窩に対する下顎頭の位置は,矢状断と前頭断で高い相関性があることが解った。また,下顎頭の骨変化は,矢状断および前頭断とも顎関節症症状とよく一致していた。下顎頭の骨変化と来院までの期間は,顎関節症症状が発症してからの期間が長いほど骨変化の発現する率が多かった。 3.顎関節症患者の治療法について 我々は,若年者の顎関節症患者に対してsplint療法後に矯正治療を積極的に行った症例の治療経過と治療前後の咬合状態と咀嚼筋機能の分析結果を検討した結果次のことが解った。顎関節症患者の矯正治療終了後の咬合状態は改善した。また,咀嚼筋の機能状態は矯正治療後は初診時と比較して咀嚼機能も改善されていた。さらに円板整復型splint療法で顎関節雑音の消失した患者の咬合挙上法は現在検討中である。
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