発光機構を明確にする一つの手段として低温高圧下の実験は有力である。しかし低温における吸収端発光にも色々問題点が残されている。精製された単体の混合より作られたCdMnTeと精製されたCdTeとMnTeの混合より作られた混晶CdMnTeに著しい違いが見られた。CdMnTeにおける発光の精密実験を行い、これをCdTeの発光と比較検討することにより、後者混晶に於いては発光の励起強度変化(Ar^+レ-ザ-励起)の測定において無添加、Cd不足のp型CdTeで観測されている励起光強度の1.5乗に比例する中性アクセプタ-に束縛された励起子発光(A^0、X)線が見られ、無添加のp型低低抗結晶で支配的なD-A対発光も観測された。また前者混晶に於いては通常の混晶に比し非常に鋭くMnに捕らえられていると考えられる発光が観測され、この温度変化により束縛は弱く無輻射遷移が支配的であると推論した。 吸収端発光の観測される位置はほぼMn濃度にほぼ比例し増加し、Mn^<2+>に起因する発光の位置はMn濃度に依存せず一定である。Mn^<2+>に起因する発光が2eVに見られる。発光位置の圧力依存性において、吸収端発光についてはCdMnTeにおいてもCdTeとほぼ同じで6.3meV/kbar(Mn5% 30K)、8.4meV/kbar(Mn50% 30K)である。またMn^<2+>イオンのd-d遷移発光(3d^5:^4Ti→^6Ai)の圧力依存性、混度依存性を測定した。圧力により-5meV/kbarで低エネルギ-側にシフトしている。また励起子発光の混度依存性は、半導体のバンドギャップの経験側とほぼ一致している。これに対して、Mn^<2+>発光の温度依存性(X=0.45)は60K付近に極小を持つ。この変化は測定を行ったすべてのMn濃度について同様に観測された。吸収端発光は温度依存性と圧力依存性に矛盾がないが、Mn^<2+>のd-d遷移について、温度依存性は圧力依存性と相いれない変化をしている事が判った。
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