新しい炭素材料の中でも最近注目を浴びているものに、1次元あるいは2次元炭素などの低次元材料がある。我々は粘土化合物の層間という2次元場を利用して2次元状の炭素を初めて合成した。本研究ではこの特異な構造をもつ2次元炭素を出発原料として種々の物質を調製し、高機能炭素材料の開発を試みることが目的である。そこで、平成元年度では、この炭素に種々の機能を賦与するため異種原子を挿入させた2次元状の黒鉛層間化合物の合成を行った。その結果、次のようなことが明らかとなった。 (1)2次元炭素でも一般の炭素と同様にカリウム黒鉛層間化合物の合成が可能であり、生成した層間化合物の色やX線パタ-ンは一般のものと同じであった。 (2)しかし、2次元炭素から合成した層間化合物は一般の炭素からのものと比べてゲストの挿入、脱離にともなう黒鉛結晶の破壊の程度も少なく、ゲストは容易に脱離できる。これは2次元炭素が極めて薄いためであり、いわゆるサイズ効果が出現したものと思われる。 このように2次元状のカリウムー黒鉛層間化合物の合成は成功し、その性状も検討することができたので、当初の予定はほぼ達成されたと考えている。さらに、このような特殊な構造の炭素では層間へのカリウムの挿入、脱離の具体的過程が一般の炭素からのものとどのように異なるかという点にも興味が持たれるが、その点については現在の段階でも不明の点が多く、今後の課題である。また、平成2年度は2次元炭素の電気物性の測定と炭素超薄膜の調製を行なう予定である。
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