研究概要 |
B型肝炎の表面抗原HBsAgは226残基のアミノ酸から成る蛋白質であるが,PreーS1領域119残基とpreーS2領域55残基をN端の前に有するlarge,moleculeとpreーS2領域のみをN端の前に有するmiddle moleculeとpreーS1もpreーS2も持たないsmall moleculeの三種類が存在する。感染性を有するDane粒子はDNA polymeraseと3.2Kbの二本鎖DNAと180分子のコア抗原HBcAgと300〜400分子のHBsAg分子(そのうちlarge moleculeとmiddle moleculeが40〜80分子)から構成されている。松原らはDNA polymeraseとDNAが存在しなくても,HBcAg分子とlarge:middle:smallの比率1:1:X(X=10ぐらい)の比率のHBsAg分子だけからDane粒子様の粒子が形成されることを見出した。先に長野らはHBcAgがライノウイルスの表面蛋白質と相同性が高いという知見を基いて,システィン残基のSS結合で重合したHBcAg dimerを詰めることによって直径28mmのコア粒子を形成させることに成功した。更にHBsAg dimerはinner dimer180分子とouter dimer180分子から成り,outer dimerの1/3がlarge molecule,その1/3がmiddle molecule,その1+1/3がsmall moleculeであるという考えですべてが説明できることを見出した。outer dimerのpreーS1領域とpreーS2領域はDane粒子の擬6回軸の所に集まり,outer dimerを安定化させる。このinner dimerとouter dimerは背中を上下にして向き合って,HBcAg dimerの上に乗り,直径48nmのDane粒子の輪郭に一致させることができた。その後佐藤らのHBsAgとリピドの分析値,花岡らの糖鎖の分析値から,小型球形粒子もHBsAgのinner dimerとouter dimerが60分子ずつ計120分子含まれ,糖鎖はすべてのHBsAg分子に1本ずつ結合し,リピドはジステアリルフオスフマチジルコリンを主成分としてHBsAg dimerに22分子結合することが明らかとなった。糖鎖とリピドについてはDane粒子でも同様であると考えるのが最も合理的である。
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