無害な金属を投与したり、または皮膚剥離などの生体刺激を与えて、体内にメタロチオネインという防護物質を産生させることにより、生体自身の持つ防御機構を活性化させ、放射線はじめ各種の環境有害要因に対する生体の抵抗性を高めることを目的として、本年度は次の実験を行った。実験動物としてマウスを用いて、あらかじめマンガンや亜鉛などの金属や、当帰(漢方薬)の抽出成分などを投与したり、マウスの背部の皮膚剥離処置をしたマウスに、6〜8グレイの致死線量のガンマ線を照射し、有害要因曝露後のマウスの血球数の動向や肝臓中のメタロチオネイン濃度の測定や生存率の変化を調べた。 その結果、マウスの有害要因=放射線に対する抵抗性は、照射後のマウスの血球数の変化に反映しており、当帰やマンガンを投与したマウスでは、赤血球の減少が緩和されていると同時に、一度放射線により減少した白血球数の回後を促進する効果があることがわかった。その際、脾臓に骨髄由来と思われるコロニ-の形成がみられ、免疾系機能が促進されたと思われる。上記の変化は、皮膚剥離のような外傷を負荷したマウスにも同様に観察された。 マンガン投与、当帰投与および皮膚剥離処置を行ったマウスは、バブルも著しい放射線抵抗性を示しており、LD_<50>で約1〜1.5グレイの高腺量側に移動しており、この際いづれの処置群でも、肝臓中のメタロチオネインの合成が、対照群の数倍から20倍に上昇していた。これらの事実は、メタロチオネイン形成という化学的防御活性の増加と、骨髄機能の促進という免疾学的防御機構の活性化という事実が、担立に関連していることを示唆する。
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