マンガンなどの金属や当帰などの漢方薬の投与、または絶食や皮膚剥離などのストレス負荷によってもたらされる生体防御機構の活性化現象のメカニズムを調べるため、前年度に引き続き今年度は、上記の処置を行ったマウスの肝臓、小腸、心臓中のメタロチオネイン量の測定に加えて、マウスの未梢血のSOA(活性酸素産生能)の上記処置後の時間的変化を測定した。その結果、上記の薬剤投与やストレス負荷後のマウスの未梢血のSOAは、処置の数時間から20数時間後に渉って増加し、それは未梢血中の多形核白血球の増加と併行していることがわかった。 次いで今年度は、絶食がマウスの肝臓中メタロチオネイン産生増加させることに関連して、マンガン投与による生体防御機構の活性化に対する食事制限の効果を調べた。すなわち、24時間おきにマウスの餌を絶ち、24時間絶食させ、断続的に餌の投与を反復し、4週間継続したマウスと、自由に餌を投与した対照群のマウスについて、それぞれ、マンガンを投与した群としない群とを作り、計4群のマウスについて、6グレイの放射線一回全身照射の影響を、30日間の生存率の変化や、放射線照射10日後の脾コロニ-生成数によって調べた。その結果、最も生存率の低かった群は、自由摂食・無処置群であり、脾コロニ-生成能の最も大きい群は、食事制限プラスマンガン投与群であることがわかった。食事制限が48時間1回のみの場合は、マウスの肝臓中のメタロチオネイン生成能は著しく増加するが、絶食を多数回繰り返した場合は、マウスの肝臓内メタロチオネイン生成量は低下することもわかった。従って、生体はストレスに反応して生体防御機構を活性化させるが、その限界について調べることも今後の課題である。
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