有機遷移金属化合物に潜在する新しい機能と物性の開発研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01490012
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 安田 源 大阪大学, 理学部, 助教授 (00028200)
• キーワード: 有機金属錯体 / 超微粒子金属 / 抗菌性炭素材 / 有機ランタニド / MMAの立体規則性重合 / チ-グラ-触媒 / フェノキシ金属化合物

研究概要

1)2,6ージアルキルフェノキシ基を有するTi、Zr、Hf、Nb化合物の純粋単離に成功した。この配位子が通常のシクロペンタジエニル配位子とどのように錯体安定化活性化に寄与するかを検討するためMCl_2(OC_6H_3R_2)_2およびMCl_3(OC_6H_3R_2)型化合物とアルキルリチウム等との反応を行ない、オレフィン類の低重合・高重合に対する触媒作用を検討中である。
2)空気中で安定な一連の有機金属ポリマ-を不活性ガス中で焼成して得た、超微粒子金属が均一に分散した炭素材の機能評価を行なった。まだ研究途上ではあるが、現時点で次の様なことが判明した。Pt、Rh、Co金属を含む炭素材料は空気中で安定であるにも拘らず、1ーヘキセンの水素添加触媒となる。Ag、Co粒子を含む炭素材は大腸菌、枯草菌、ブドウ球菌、緑膿菌、ガンジタ菌に対して優れた抗菌作用を示した。このことは本素材が浄水用材料として使用できることを意味する。Fe、Co,Ni、Cr微粒子を含む炭素材は良好な伝導性と磁気特性を示し、電磁波シ-ルド材としての用途が考えられる。Fe、Co粒子を含む炭素材は過酸化水素を触媒的に分解する。
3)〓高いペンタメチルシクロペンタジエニル基を有する一連の有機ランタニドがアクリル酸エステルの高重合触媒となることを見出した。分子量分布が従来のものに比較してはるかに狭い上、低温の重合で高度にシンジオタクチックなポリマ-が得られ、しかも分子量が10万以上のポリマ-を合成できるといった理想的なリビング重合である。
4)チ-グラ-触媒の本質を理解するためチタンのアリル化合物のX線解析を行なった。また一連のニオブのアルキン錯体についても初めて単離に成功し構造解析を終了した。今後これらを用いた反応について詳しく研究する。

研究成果

• [文献書誌] H.Yasuda: "Diverse Reaction Courses in the Controlled Carbometalation of Heterocumulens with Zirconium-diene Complexes and Molecular Structures of CO_2,RNCO,and ketene Inserted Compounds." Organometallics. 8. 1139-1152 (1989)
• [文献書誌] H.Yamamoto: "Structural Features in Electron Deficient Pentamethylcyclopentadienyl titanium-diene Complexes and Their Catalysis in the Selective Oligomerization of Conjugated Dienes." Organometallics. 8. 105-119 (1989)
• [文献書誌] H.Yasuda: "Semiconducting Organometallics:Electrical Property of Fe(CO)_3ー(diene)Complexes Doped with Iodine and ^<57>Fe Mossbauer Spectroscopic Studies" Chem.Materials. 1. 384-390 (1989)
• [文献書誌] H.Yasuda: "Regio-and Stereochemistry in the Sequential Insertion of Carbonyl Compounds to Zirconium-diene Complexes." J.Organomet.Chem.363. 61-76 (1989)
• [文献書誌] H.Yasuda: "Novel Route to Allylniobium Compounds by Hydrometalation of Conjugated Dienes with NbH(C_5H_5)_2(olefin)." J.Organomet.Chem.361. 161-171 (1989)
• [文献書誌] H.Yasuda: "Facile Reduction of Organometallic Halides with Bis(pentamethylcyclopentadienyl)ytterbium and the X-ray Structure of Yb(C_5Me_5)_2Cl." Chem.Lett.1309-1312 (1989)
• [文献書誌] 安田源: "炭素素原料科学の進歩(分担)" CPC研究会, 300 (1990)