研究概要 |
これまでの研究結果は次の通りである。 1.日本列島におけるスギ林の着花状況について 九州から秋田県まで主要林業地のスギ林の着花状況を調査した。スギ林の着花は地方によって著しく差があった。一般に関東・東海・関西及び四国地方の実生スギ造林地帯は雄花の着生が多く、九州・北山・智頭地方などさし木スギ造林地帯は雄花の着生が少ない傾向がみられた。また品種系統、樹齢、生育場所、年度などによってスギ林の着花に著しい差がみられた。九州の在来品種やサンブスギなどは壮齢林でも着花が少なく、今後はこのような着花性の劣る品種を人工造林に使用することが花粉症対策上重要である。 2.スギ林、ヒノキ林における花粉生産量について 条件の異なるスギ林、ヒノキ林にリタ-トラップを設置して雄花を回収し、花粉生産量を推定した。花粉生産量は、品種、林齢、生育場所、年度などによって著しく差があった。スギ林では実生スギの林はさし木スギの林よりも生産量が多く、また老齢林や神社等の老木は豊作年に多量の花粉を生産した。豊作年における花粉生産量は、スギ林で102〜1,032kg/ha、ヒノキ林で94〜156kg/haと推定された。 3.スギ花粉の飛散動態について 日本列島におけるスギ花粉の飛散時期は年度及び生育場所によって差があった。関西地方では花粉前線は2月上・中旬に始まり、飛散期間は60〜80日に及んだ。花粉の飛散数は年度、場所、森林の状態によって著しく差があった。豊作年には1シ-ズンに林地で最高17,000個1cm^2花粉が落下した。都市部でも1,000〜6,000個/cm^2の花粉が落下した。しかし、凶作年には花粉の飛散数は著しく減少した。
|