研究概要 |
平成2年度には関東地方及び山陰地方のスギ林の着花状況を調査し,更にスギ林11林分,ヒノキ林3林分で雄花の落下量を調査して,林分の花粉生産量を推定した。また薬剤によるスギ雄花の枯殺について研究した。 1.1990年のスギ林の着花状況:関東地方は豊作,山陰地方は並作程度であった。千葉県では,サンブスギの造林地は雄花の着生が少なく,実生スギ造林地は雄花の着生が多かった。栃木県のスギ林は実生林で,雄花を多く着生した。日光スギ並木の老木も着花量が多かった。関東地方の実生スギは10年生で雄花を着生し,20〜30年生から着花が旺盛になった。しかし,サンブスギ林は壮・老齢でも着花が著しく少なかった。 2.スギ林・ヒノキ林の花粉生産量:スギ林におけるha当り花粉生産量は,鳥大樹木園の10〜14年生実生林で255〜693kg,鳥大蒜山演習林の30〜34年生実生林で62〜562kg,新庄スギさし木林で3.5〜187kg,智頭町の95年生さし木林で30〜376kg,新庄村の50年生実生林で7.4〜664kg,同老齢天然林で7〜1,054kgであった。林分,年度,樹齢などによって花粉生産量に大きな差がみられた。豊作年には,中・壮齢の実生林で250〜660kg/ha,老齢林で1,050kg/haの花粉が生産されことがわかった。一般にウラスギのさし木林は実生林に比べて花粉の生産量が少ない傾向がみられた。 ヒノキ林のha当り花粉生産量は,蒜山演習林の20年生林分で9.6〜164kg,山口奥国有林の80年生林分で1.3〜93kg,山陰支場の60年生林分で80〜621kgで,やはり林分及び年度によって差がみられた。花粉生産量は豊作年には最高620kg/ha,凶作年には10kg/ha以下であった。 3.薬剤によるスギ雄花の着花抑制:マレイン酸ヒドラジッド,NAA,Bーナインなど植物成長調節剤の散布によってスギの雄花を枯殺することができた。これらの処理は,雄花分化直前〜初期が有効であった。
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