地方社会の自己証明ー広島の学際的研究ー

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01490016
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 頼 祺一 広島大学, 総合科学部, 教授 (50033494)
• 研究分担者: 堀 信行 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40087143) ; 樫原 修 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50132064) ; 朝倉 尚 広島大学, 総合科学部, 教授 (80033231) ; 嶋 陸奥彦 広島大学, 総合科学部, 助教授 (30115406) ; 佐竹 昭 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00127656)
• キーワード: 地方社会 / 文化的アィデンティティ / 移民 / 生活様式 / 県民性 / 村落共同体 / 城下町

研究概要

平成元年度提出の研究実施計画に基づき、当該年度中に以下のような調査・研究を行った。その結果得られた知見を含めて次に記す。
1.研究および研究集会 広島大学で研究会を4回開催した。1回目の研究会では、広島に即して、地方社会の文化的アイデンティティを明らかにする諸方法について討議。各分担研究者が各自の方法を研究発表のかたちで報告するなかで枠組みを設定していくことにする。2回目の研究会では、頼が明治初年の広島の生活について、「近代文明」の導入によって様々な城下町の民俗が消滅させられていく過程を報告。3回目の研究会では嶋が明治前半の広島県からの旅券申請記録を整理し、特にアジアへの「移民」を多く出していることに注目。また川辺が広島県人らしさについて、いくつかの視点を総合する枠組みを提案。4回目の研究会では、佐竹が江戸時代を通じて島嶼部の人口増加とその背景について分析、その生活様式の特色を報告した。来年度もこのような研究会を続けて開催し、集約の枠組み設定をめざす。
2.調査および資料収集 (1)共同調査では、三次市立図書館、双三郡布野村教育委員会保管資料および豊田郡豊田教育委員会・宇津神社資料の調査を行い、地元研究者の協力を得て山間部・島嶼部の地域的特質について意見交換した。また、九州大学九州文化史研究施設などで、瀬戸内地域との交流に関する資料を調査・収集し、長崎にも足を伸ばして、広島との比較研究の可能性について予備調査をおこなった。(2)個別的には、嶋が明治期の芸備日々新聞から移民関連記事を収集、県統計書のデ-タベ-ス化も検討中、堀は広島の空中写真から景観の年次的変化を復元する作業を行っている。

研究成果

• [文献書誌] 頼祺一: "近世瀬戸内の文化交流" 専門図書館. 125. 1-11 (1989)
• [文献書誌] 佐竹昭: "安芸郡沿岸島嶼部の人口増加と耕地の拡大について" 広島県文化財ニュ-ス. 123. 7-12 (1989)
• [文献書誌] 嶋陸奥彦: "旅券下付表分析ー明治後期におけるアジア地域への渡航者に関する予備的観察ー" 『日本社会論および国際社会論からみた広島についての総合的研究』. 221-236 (1989)
• [文献書誌] 嶋陸奥彦: "大邱戸籍試掘ー方法論的試図ー" 『斗山金宅圭博士回甲記念文化人類学論叢』. 199-211 (1989)
• [文献書誌] 朝倉尚: "「厳島八景」考ー正徳年間の動向ー" 瀬戸内海地域史研究. 2. 267-327 (1989)
• [文献書誌] 朝倉尚: "景徐周麟の文筆活動ー文明十九年=長享元年ー" 広島大学総合科学部紀要I地域文化研究. 15. 1-26 (1990)
• [文献書誌] 樫原修: "梶井基次郎の人と作品1〜4" 月刊国語教育. 平成元年5月号〜8月号. (1989)
• [文献書誌] 樫原修: "名辞以前の世界と名辞ー中原中也の詩論ー" 国文学解釈と鑑賞. 平成元年9月号. 122-126 (1989)
• [文献書誌] 川辺信雄: "広島における小売商業構造の変化と商店街づくり" 広島大学経済学部付属地域経済研究センタ-紀要 地域経済研究. 1. (1990)
• [文献書誌] 川辺信雄: "The Development of Distribution Systems in Japan before World War II" (William J.Hausman,ed.)Business and Economic History. 2ー18. 33-44 (1989)
• [文献書誌] 有元正雄・頼祺一・佐竹昭 ほか: "図説広島市史" 広島市, 277 (1989)