研究分担者 |
佐竹 昭 広島大学, 総合科学部, 助教授 (00127656)
樫原 修 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50132064)
嶋 陸奥彦 広島大学, 総合科学部, 教授 (30115406)
堀 信行 広島大学, 総合科学部, 助教授 (40087143)
朝倉 尚 広島大学, 総合科学部, 教授 (80033231)
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研究概要 |
今日の日本においては,地方社会の「自己証明」(文化的アイデンティティ)が大きな関心事となっている。本研究は,広島地方を対象として,その文化的アイデンティティの様相を,歴史学・文化人類学・文学・環境地理学さらには経済学の立場から学際的に研究することを目的とした。広島を研究対象としたのは,〔1〕研究代表者および研究分担者が,各自の研究分野から地域研究に従事していること,〔2〕広島が国際平和文化都市として「世界のヒロシマ」を主張する反面,強固な「地方的宇宙」を保持した地域とされていること,によつている。研究過程で,十数篇の個別論文を発表し,最終的には「研究成果報告書」を作成した。 本研究は,各自の分担課題から,広島の文化的アイデンティティの形成および変化の諸相を,歴史的に明らかにしていく方法をとったが,次のような諸点を明らかにしている。〔1〕文化的アイデンティティは,住民の地域認識に深くかかわるものであるが,その形成には知識人の役割りが大きい,〔2〕文化的アイデンティティは,歴史意識と関連する,〔3〕文化的アイデンティティは,従って,時代によってその中味が変化していく,〔4〕「地方」意識が高まるにつれて「中央」を意識した文化的アイデンティティに変容していく,〔5〕にもかかわらず,地方の文化的アイデンティティは独善的になる可能性があり,他地方の人には理解されにくい,〔6〕文化的アイデンティティとされるものには,意識的あるいは無意識的に,普遍的なものへの回帰がみられる(とくに景観論の視点から)。 研究の過程で数度の共同調査を実施したが,そこで収集した資料の一部は「研究成果報告書」に収録した。なお,当初は同じ被爆都市である長崎との比較研究を予定したが,研究期間内では果たせなかった。地方社会の文化の動態と,地方文化の可能性を考えることも,今後の課題としたい。
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