研究概要 |
わが国の牛,馬の渡来時期やその経路を明らかにするために、昨年度に引きつづき全国の遺跡から出土した牛,馬に関わる遺物について調査すると共に、出土骨や歯を肉眼的、計測学的に検索し、在来牛や在来馬のものと比較を行い、以下の結果を得た。 1、牛,馬の骨や歯の出土状況は、現地調査や各都道府県からの報告ならびに文献によって行ったが、牛は全国で205ケ所からの出土がみられ、九州,関東が多く、馬は467ケ所からの出土で、やはり関東が多い。また、時代別では牛,馬共に中世が最も多く、ついで平安、古墳、奈良の順である。弥生以前のものも報告されているが、現在のところ東京都の伊皿子貝塚(弥生中期)の牛骨が最も古く、確実な出土例である。 2、馬具の出土状況は、古墳時代を中心に調査したが、全国で1265ケ所の遺跡から出土しており、地域別では九州の368ケ所が最も多く、ついで関東、近畿、中国の順である。また、時期的には4〜5世紀初頭に古墳の副葬品としてみられ、5世紀代に分布域が広がっていったと考えられ、7世紀には古墳の減少と共に馬具の出土数も激減する。 3、埴輪馬の出土は、全国297ケ所にみられるが、関東が圧倒的に多く、170ケ所を占め、ついで近畿、九州であり、5世紀末頃から出現し造形的に最も充実したのは6世紀代である。祭祀に用いられたとみられる土馬は、奈良、平安時代に最も多く、全国589ケ所のうち、328ケ所が近畿地方で、特に平城京、平安京など古都に多い。 4、出土骨の形態は、牛では在来牛の見島牛や口之島牛のものに似ており、馬では御崎馬やトカラ馬など在来馬に類似しており、体高は128cm前後で、小型馬より中型馬に属するものが多い。 以上の調査研究から、わが国の牛、馬は、弥生以降に朝鮮半鳥を経由して渡来し、当時の人々に飼育されていたことが示唆される。
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