巨大DNAクロ-ニングによるヒトHLA抗原遺伝子の構造解析

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01490022
• 研究機関: 東海大学
• 研究代表者: 猪子 英俊 東海大学, 医学部, 助教授 (10101932)
• 研究分担者: 安藤 麻子 東海大学, 医学部, 助手 (40101935) ; 辻 公美 東海大学, 医学部, 教授 (30055834)
• キーワード: HLA / 巨大DNAクロ-ニング / pYACベクタ- / ミニF因子ベクタ- / 遺伝子ライブラリ- / 形質転換菌

研究概要

ヒトの主要組織適合複合体(MHC)であるHLA抗原は免疫応答の制御やさまざまな疾患の発症に関与し、HLA遺伝子群は3500Kb以上からなる長大な多重遺伝子族を形成している。我々はこれまでに約900KbのHLA遺伝子コスミドクロ-ンを分離したが、全領域をクロ-ニングするには至っていない。本研究はこれら未知の領域を酵母pYACベクタ-及び大腸菌F因子ベクタ-を用いて巨大DNAクロ-ニングを行い、HLA遺伝子全領域の遺伝子構成を明らかにすることを目的とする。今年度はHLAホモ接合体B細胞株AKIBAより巨大DNAライブラリ-の作成を試みた。大腸菌ミニF因子をベクタ-として用いる系では細胞より凍結破砕法を用いてDNAを抽出し、50〜300Kbの断片が生じるようにEcoRIで部分切断した。このDNA断片をミニFpMF7のEcoRI切断部位に挿入し、大腸菌HB101に形質転換した。その結果、50Kb前後の挿入断片を持つAmp耐性形質転換菌(1×10^4/μgDNA)が得られた。一方、酵母のpYAC4ベクタ-を用いる系ではアガロ-スビ-ズ法によりビ-ズ内に細胞を封入し、ビ-ズ内の高分子DNAをEcoRIで部分切断後、pYAC4のEcoRI切断部位に挿入し酵母AB1380に形質転換した。1×10^3/μgDNAの頻度で形質転換コロニ-が得られ、挿入DNA断片の長さは大部分が100〜150Kb前後であり、200〜400Kbの長さの挿入断片を持つ形質転換体も約10%みられた。この方法により現在までに2000個余りのUra^+,Trp^+の形質転換体の分離と保存を行った。以上の結果より、大腸菌ミニFベクタ-を用いた系では100Kb以上の挿入断片を持つ形質転換体は分離できず、pYAC4ベクタ-を用いた系では100Kb以上の挿入断片を持つ形質転換体が得られたことから、現在pYAC4ベクタ-を用いた系でライブラリ-の作成を進めている。今後、電気泳動法とショ糖密度勾配遠心法によって200Kb以上の長いDNA断片を分画し、より長い挿入断片を持つライブラリ-の作成を試みる予定である。

研究成果

• [文献書誌] 猪子英俊: "HLAーDQによる免疫制御" 臨床免疫. 21. 945-957 (1989)
• [文献書誌] Asako Ando: "Mapping and nucleotide sequence of a new HLA class II light chain gene,DQB3" Immunogenetics. 30. 243-249 (1989)
• [文献書誌] Takehiko Uchiyama: "Activation of human T cells by toxic shock syndorome toxin-1.The toxin binding structures expressed on human lymphoid cells acting as accessory cells are HLA class II molecules" Eur.J.Immunol.19. 1803-1809 (1989)
• [文献書誌] 猪子英俊: "HLA抗原の機能と遺伝子構成" 生体防御. 7. 21-34 (1990)
• [文献書誌] 猪子英俊: "HLA抗原のDNAタイピング" 日本臨床. 48. 778-785 (1990)
• [文献書誌] Masahiro Maeda: "A simple and rapid method for HLA-DP genotyping by digestion of PCR-amplified DNA with allele-specific restriction endonucleases" Human Immunol.27. 111-121 (1990)
• [文献書誌] 猪子英俊: "最新免疫学II" 同文書院, 17 (1990)
• [文献書誌] 猪子英俊: "Annual Review" 中外医学社, 22 (1990)