研究概要 |
ヒトHLA遺伝子領域に位置する疾患感受性遺伝子の同定,遺伝的多型性の生成の機序の解析、ヒトの遺伝子構成の解明などを目的として、HLA全領域のクロ-ニングをすすめているが、本年度はYACライブラリ-よりHLA領域を含むクロ-ニを分離、解析するとともに、コスミドによるクロ-ニングをおこない、新しく400kbの領域について構造解析をすすめることにより新しい遺伝子9個を同定した。すなわち、YAC及びコスミドによるジ-ンウォ-キング,パルスフィ-ルド電気泳動による物理的地図の作成とCpG islandの同定,マウスHー2領域にマップされる遺伝子プロ-ブなどをもちいて新しく400kbをクロ-ニングし、それらの領域についてノザンブロッティングやcDNAクロ-ンの分離と塩基配列の決定などの方法により発現遺伝子の同定をおこなった。その結果,DNAーDOB間に新しい遺伝子NATを同定し、cDNAクロ-ンの解析によりATP依存輸送蛋白様の産物をコ-ドする遺伝子であることが判明した。さらにHLAーDP遺伝子亜領域よりテロメア側コラ-ゲンα2サブユニット遺伝子をはじめ6つの発現遺伝子、クラスIIIークラスII遺伝子間にフィブロネクチン様の遺伝子、クラスIIIークラスI遺伝子間に精細胞特異的熱ショック蛋白70様遺伝子を新しくみいだした。 このようにHLA領域には多くのnonーHLA遺伝子が座位していることが明らかとなり、これらの遺伝子が疾患の発症を規定している可能性が考えられ将来重要な課題と考えられる。発現遺伝子が高密度に分布しているHLA領域はヒト遺伝子構成を知る格好のモデルを提供するであろう。現在,YACライブラリ-のスクリ-ニングを中心にHLA全領域のクロ-ニングをすすめている。
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