種々の分子量を持つ、構造の明確なHEMAとスチレンからなるブロック共重合体を合成し、その表面構造を透過型電子顕微鏡、ESCA、動的接触角などにより明らかにした。ポリマ-表面は、乾燥状態ではスチレンセグメントが、水中ではHEMAセグメントが濃縮されていることが示されたが、血小板粘着量などはブロック共重合体では単独重合体と比べ大きく異なることから水中での表面のポリマ-分子の運動性なども考慮する必要があることが明らかになった。これらのポリマ-を用い、血小板の粘着量の対する表面構造の影響をミクロドメインのサイズに注目して調べ、ドメイン幅150A程度で粘着量は極小値を持つことが明らかになり、すでにin vivoの実験で得られている結果に対応させることができた。血小板活性化抑制に機構を明らかにするため、代謝を抑制した血小板を用いた実験を行った。コルヒチンなどで血小板を処理し、粘着量を測定したところポリエスチレンなどでは処理することにより、粘着量の低下がみられたのに対しブロック共重合体では変化がみられず、ミクロ相分離表面では血小枝の代謝をともなう活性化(能動的粘着)が表面の構造により抑制されていることが明らかになった。さらに、材料表面に粘着した血小板内のカルシウム濃度変化から、血小板の材料表面との接触による活性化は、細胞外のカルシウムの流入が大きく関与していること。活性化機構はトロンビンなどによる刺激と異なっていることなどが明らかになった。抗血栓性の評価のin vivoの実験として、皮弁遊離移植における皮弁の栄養血管の保持に人工血管を用いることを試み、静脈測の血流量を増大させるためにAーVシャントを形成したところ、血流量の増加がみられ完全生着したものもみられ、人工血管を用いた組織移植は十分可能だと考えられる。以上本研究を通して、抗血栓性発現の機構及びin vivoでの可能性について検討を加えた。
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