研究概要 |
本研究の目的は,今日の経済社会の国際化と情報化の環境下にあって,銀行,保険会社(その融資部門),証券会社,リ-ス会社,調査機関,監査法人等の分析主体が行う外部分析としての経営分析の実務の実態をアンケ-ト調査により明らかにすることである. 本研究から得られた知見は次のとおりである. 分析主体は,その個所性,業種,規模等にかかわらず,原則的に伝統的技法の枠内で経営分析を実施している.分析主体は,その分析目的や業種にかかわらず,収益性分析を相対的に最も重視しており,安全性分析,成長性分析,資金フロ-分析の重要度は必ずしも明確ではない. 売上高と経常利益のこの実数値は,経営分析を行う際にみて最も重要視される経営指標である.しかし,各経営指標について分析主体が重視する度合は,分析主体の業種,規模および分析目的によってかなりの差異がみられる. 資金フロ-分析については,資金運用表と資金移動表を作成することが多いといえる. 損益分岐分析については,収益性分析の一環として比較的重視されており,原価の分解には原価項目調査法が用いられていることが非常に多い. 本来の財務諸表以外では,比較貸借対照表が最も用いられ,業種により異なるがつぎに比較損益計算書と趨勢損益計算書が重視されている. 多変量解析法等の新しい技法に関心ある分析主体は少なくないが,現実に利用しているものは比較的少ないし,また満足しているものはさらに少数である. 伝統的技法と新しい技法を活用するためには,経営分析を標準化し,さらにAI的アプロ-チの導入が有効である.そのためには規範的研究と実証的研究の両方を共に推し進めることが必要である.
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