1.「カント哲学の現代性」においては、(1)『純粋理性批判』を《論理的意味論》として読み解く作業に従事し、「形式論理学」を二値原理に基く実在論的な現代の古典論理の部分系、「超越論的論理学分析論」を可能的経験に制限された反形而上学的、反実在論的意味論であるとの規定に達した。(2)アンチノミ-論と、現代の数学基礎論上のパラドクス、非ユ-クリッド幾何学を含めた直観的幾何学のモデル的性格、論理主義のゲ-デルの定理による破綻を通じて、カントの算術・幾何学の綜合性の主張の現代的意義を明らかにした。(3)クワイン・パトナムの指示の不確定性の主張が、カントの超越論的概念論と経験的実在論とを併せ主張することの現代的意義を照明するものであることを示した。レ-ヴェンハイム・スコ-レムの定理に基くパトナムの内部実在論との連関も考察された。 2.カントのアプリオリ性や様相概念と現代の様相論理の可能世界意味論の連関、パラロギスムスと現代の信念文の意味論をめぐるパズルとの連関を追求した。カントはアプリオリ性と必然性とを密接に連関させたが、それはミスリ-ティングであることが示された。 3.カントの算術の綜合性の主張は、ヒルベルトらの形式主義・ブラウワらの直観主義の〈有限の立場〉と密接な連関をもち、更にその内実を探究することが必要とされる。 4.カントが主張する経験科学のアプリオリ性と、反実証主義的なポパ-や、更には理論負荷性を主張するハンソン、科学革命の断絶と反収束主義・反実石論的なク-ン・ファイヤ-ア-ベントらの主張との異同と考察された。
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