本研究の目的とするところは、漢訳された仏典の内、難解なものを読解するための基礎的研究作業として、特に法華経をケ-ス・スタディとして取り上げ、その梵文原典と漢訳経典の言語レベルでの精査な比較検討を行なうことにある。その方法として、今後文献レベルでの比較研究がコンピュ-タ-を利用したものとなるであろうことを見込み、比較対象文献、即ち梵文法華経、正法華経、妙法蓮華経の各テキストをデ-タベ-ス化することを当面の作業目的としている。 本年度は、昨年度に引き続き、梵文法華経、すなわち、荻原雲来校訂『改訂梵文法華経』と、竺法護訳『正法華経』のデ-タベ-ス化、コンピュ-タ-入力作業を行い、ほぼこれを完了した。 また梵文法華経の各種写本のデ-タベ-ス化と、テキストの索引の作成についても作業中である。また、研究計画の当初には予定していなかったが、法華経のチベット語訳“Dam pahi chos pad ma dkar po shes bya ba ba theg pa chen pohi mdo"のコンピュ-タ-入力をも計画し、これに着手した。よって、研究計画が多少変更になったことを報告しておく。 さらに梵文法華経各種写本用語の検討作業については続行中であり、この作業を通じて得た一つの成果は、昨年度に「東大写本No.102(I)と薬王菩薩本事品」と題して、『法華文化研究』第16号に掲載したが、それに続く研究を、『立正大学大学院紀要』第7号に「東大写本102(I)(1)【Folios 7b5ー8b6】」として掲載した。
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