研究課題/領域番号 |
01510020
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研究機関 | 身延山短期大学 |
研究代表者 |
宮崎 英修 身延山短期大学, 宗教科, 教授 (20062721)
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研究分担者 |
林 是晋 身延山短期大学, 宗教科, 助教授 (90189647)
中篠 暁秀 身延山短期大学, 宗教科, 教授 (50188968)
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キーワード | 日向 / 身延山久遠寺 / 法華真言勝劣事 / 真言見聞 / 本門戒体抄 / 一代五時図 / 真言見聞本巻 / 真言見聞別巻 |
研究概要 |
金綱集(古来十巻本・現行は14巻本)は、身延二祖日向(1253〜1314)が日蓮晩年の身延山での講義を、たとえば「浄土宗見聞」・「真言宗見聞」などと諸宗に配して記述したもので、古来から身延山門流の秘書として重んぜられた有名なもので、現在の写本は身延三世日進・四世日善等によって等写され、日蓮の直弟の著作としては最も大部のものである。しかし、何故に金綱集が編まれたかは一切不明である。ただいえることは、日蓮が『一代五時図』等に基づいて、釈尊一代の教説の位置づけを行なっていることから見て、恐らく日向は、それを更に綿密にして、諸宗の主張を明瞭にすることが、その主眼であったと考えられる。すなわち、『一代五時図』等が「華厳・阿含・方等・般若・法華涅槃」の五時教判を中心として、それに対する各宗の配当を図示するのに対し、金綱集は各宗を柱として、その宗の依経・依論・祖師などについて詳述し、その特徴的教義を揚げている。要は、諸宗破立の素材として金綱集が編まれたものと解すべきであろう。 次に、金綱集には日蓮遺文と共通する文がかなり散見される。たとえば『法華真言勝劣事』・『真言見聞』は金綱集の「真言集見聞」と、『本門戒体抄』は金綱集の「小乗三宗見聞」と、それぞれ全面的に共通するのである。しかも、これら三遺文は日蓮の撰ではなく、金綱集を底本として作成された遺文である。その他、類似乃至部分共通のものは数多く存する。加えて、日蓮滅後の上代には、金綱集と基盤を共通する典籍がかなりある。特に、中山三世日祐(1298〜1374)の『問答肝要抄一雑帖』は、身延日進(1259〜1330)へ法門の質問事項を箇条書としたもので、金綱集の条目と重なるものが大半である。かかる事実は、当時の中山・身延西門流の交渉の一環が伺えて、極めて興味深いところである。
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