本研究は、北奥羽と沖縄地方を主たるフィ-ルドとして、民間巫者(イタコ、カミサマ、ユタなど)に見られる様々な「修行」の形態やその評価、修行観などを系統的に整理し、そこに展開される救済の機能や構造を明らかにすることを課題としている。 平成2年度は、計画の第2年目にあたり、前年度に引き続き、沖縄・北奥羽両地域における民間巫者とその依頼者・信者に対する、集約的なフィ-ルド・ワ-クを行ない、彼らの「修行」の実態や、修行観に関するデ-タの蓄積に努めるとともに、理論的パ-スペクティヴを確立するために、「修行論」をめぐる先行研究の収集を行なった。 このうち、北奥羽地方については、7月18日より12日間、西津軽郡鰺ケ沢町、および弘前市とその近郊に在住するカミサマ系巫者について調査を実施した。さらに11月25日から5日間、青森市周辺において同様の調査を行なった。 沖縄地方については、8月21日より8日間、および平成3年2月21日より7日間、それぞれ調査を実施し、民間巫者のみならず、彼らと世界観・救済観を大幅に共有しつつも、これと競合関係にある外来宗教、とくにキリスト教系教派にも注目し、その担い手たちの「修行」的行動についても精査した。さらに今年度は、ヤマト文化と琉球文化の接点に位置する奄美地方にも注目し、奄美大島のユタ的宗教者たちの修行の実態についてもヒアリングを行なった。そして「修行」的要素が弱く、生得的宿命観の強い沖縄文化に対し、修行文化の卓越したヤマト文化という、当初の対比的仮説を、さらに裏付けることができた。 なお、本研究の成果の一部として、論文「地方紙に見る青森県の民間巫者」その他発表した。
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