本年度は天理教系の新宗教教団である修養団捧誠会を中心に、主として習合神道系新宗教教団の道徳意識と道徳実践について研究した。新宗教において道徳は「心なおし」の問題として捉えられている。そして「心なおし」は救済を実現するための手段でもある。そこで救済のための行法と「心なおし」の関係についの解明が重要な手がかりとなる。 本年度は以上の観点から、まず修養団捧誠会の教祖の伝記について原地調査も含めて研究し、教祖の救済観・救済行法と道徳意識の形成過程の究明に努めた。また、自然社、イエスの方舟、幸福の科学、修養団捧誠会等の本部・支部を訪問し、その実践を観察し、インタビュ-を行なった。その際、信仰者の道徳意識・道徳実践の把握に努めるとともに、それらがどのような社会的含意をもっているかにも探りを入れた。すなわち、社会意識・政治意識を道徳意識との関わりにおいて把えるという課題にまで踏み込むこととなった。修養団捧誠会の場合、教祖の天皇観、戦争観、宗教観等が時代によって微妙な変化を見せており、会員の中にも地域、年齢、職業、性別等によって、さまざまに異なる見解が存在している。この多様な見解をできるだけもらすことなく拾い上げることを目標とし、ある程度の成果をあげた。 さらに、天理教系のみならず、ひとのみち系、大本教系等、神道系の諸教団の救済観、救済行法、道徳観について、刊行された書籍をはじめとする諸資料の収集に努めた。これらの比較研究については今のところとりかかったばかりであり、次年度の重要な課題となろう。
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