研究課題
本研究は、個の誕生から死にいたる道程としての生を、さまざまな歴史的伝統に培われた異なる哲学・倫理学的立場から探求したものである。生は、誕生、成熟、老い、病死等々それぞれの事象に対して、種々様々な姿を呈示するが、その都度の生の意味をさぐるとともに、これを統括し支える生そのものの論理と構造を追求した。各研究分担者の直接的な共同作業としては、東西の生や死についての考え方や諸デ-タを収集し、これをいろいろな視点から分類して、各地域や時代の特徴をつかむとともに、現代人の日常的意識のなかでの生と死の概念を調査検討して、新しい生命観への展望を探求した。しかしながら、研究課題の広範さから、当初の予定よりはやや遅れをとった感は否めない。本年度の具体的活動としては、およそ隔月に共同の研究会(調査を兼ねた合宿旅行を含む)における比較思想的観点からの討論を行った。また専門家として筑波大学の竹村牧男氏(仏教思想)を招いて検討会等を実施した。その結果、昨今の情勢から見て、日本の風土、習慣における生と死の観念の複雑さと、急速に展開する脳死問題の取扱いの困難さとを、どのように関係させ、処理するか、が重要な課題となった。さらに、その後の検討により、問題をより根源的な部分にまでおし進めなければならないことが判明したため、生命観をめぐるより基本的な思想の研究を深めることに意を注ぎそれなりの成果を収めた。
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