乳幼児・サル・ネズミ・ハトの「認知的」行動に対する実験的アプロ-チ

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01510040
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 岩本 隆茂 北海道大学, 文学部, 教授 (10000605)
• 研究分担者: 須藤 昇 北海道大学, 文学部, 助手 (40154611) ; 和田 博美 北海道大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (90191832) ; 平岡 恭一 弘前大学, 教育学部, 助教授 (40106836)
• キーワード: 条件性見本合わせ / 色光刺激 / 形態刺激 / 弁別学習 / トルエン / 一般活動性 / 推移性 / ハト

研究概要

本年度の研究において、得られた主要な結果は以下のとおりである。
*プロジェクト1:「色光刺激と形態刺激を用いたハトの異同見本合わせ課題の習得と有機溶剤トルエン注入の影響」
8羽のハトを2郡に分け、それぞれに対して見本刺激と比較刺激に形態刺激のみの場合、色光刺激→形態刺激および形態刺激→色光刺激の場合で、条件性見本合わせ課題による弁別学習を行った。見本合わせにはMatchingとOddity課題が用いられた。結果は、どちらの群においてもOddity課題の正答率がMatching課題のそれよりも上まわっていた。このことから、本実験の刺激弁別学習においては、見本刺激と比較刺激が相違している課題の方が、より学習を促進させたといえる。この実験に引き続いて、これらの被験動物に対して有機溶剤の代表的存在であるトルエン、10mg、20mg、40mg、80mgをそれぞれ注入した。一般活動性にまったく影響のない40mg以下では、20mgの注入ではわずかの、40mgの注入ではかなりの、弁別学習への促進効果が検出された。80mgの注入では弁別学習の成積は悪化したがその原因は一般活動性の低下に帰せられた。
*プロジェクト2:「ハトの条件性弁別課題における推移性の検証」
動物における推移性(transitivity)の研究は、ネズミ、サル、類人猿などを用いて行われてきている。それらの結果では、ハトやネズミではまったく推移性は報告されておらず、サルと類人猿についてはその可能性を報告したSavageーRumbaughら(1986)やD'Amatoら(1985)の実験には、Hayes(1989)の鋭い指摘によって多くの疑問点が明らかになった。本研究では4羽のハトを用い、色光刺激と形態刺激を対とした条件性遅延見本合わせ課題を用い、その2羽において明瞭な推移性の成立が得られた。

研究成果

• [文献書誌] 久能 弘道・岩本 隆茂: "「ハトの2課題並列遂行場面における課題習得過程の分析」" 日本動物心理学会第50回大会口頭発表. (1990)
• [文献書誌] 岩本 隆茂・上田 悦子: "「行動心理学と認知心理学(III)ー現実的認知心理学へむけてー」" 北海道大学文学部紀要. 38ー2. 119-178 (1990)
• [文献書誌] 平岡 恭一: "「2重交替反応の確率的強化事態におけるハトの選択行動(その2)」" 日本心理学会第54回大会発表論文集. 54. 626 (1990)
• [文献書誌] Wada,H,Marushichi,S.,Abe,M.,Kuno,H,& Iwamoto,T.: "“Effects of toluene administration on delayedーmatchingーtoーsample task in pigeon."" FOURTH INTERNATIONAL SYMPSIUM : Neuroーbehavioral methods and effects in occupational and environmental health.8-11 (1991)
• [文献書誌] 久能 弘道・岩本 隆茂: "「ハトの2課題並列遂行場面における課題習得過程の分析 II.微視的分析を中心として」" 北海道心理学会第37回大会口頭発表. (1990)
• [文献書誌] 須藤 昇: "「構造性の高い刺激セットの学習と再認におよぼす先行経験の効果」" 日本心理学会第54回大会発表論文集. 54. 661 (1990)
• [文献書誌] 岩本 隆茂・川俣 甲子夫(共著): "シングル・ケ-ス研究法" 勁草書房, 318 (1990)
• [文献書誌] 岩本 隆茂(編著): "まなぶとはなにか" 川島書店, 267 (1991)